アトピー性皮膚炎の治療


アトピー性皮膚炎は皮膚の表皮の最も外側にある、角層の中のセラミドという角質細胞間脂質が減少し、乾燥肌になるのが原因です。
乾燥肌になると皮膚のバリア機能が低下し皮膚炎を起こします。
種々ある疾患の中でアトピー性皮膚炎ほどドクターショッピングを繰り返したり、民間療法に頼ったりする事の多い疾患は他にはありません。
患者さんの多くが治療が中途半端のまま治らない、治らないと言って、病医院を転々としているのが実態です。
その原因の大半がステロイド外用薬が適切に使用されていないという事です。
言うまでもなくアトピー性皮膚炎は、皮膚の炎症です。
この炎症を抑える事の出来る薬はステロイド外用薬と免疫抑制外用薬しかありません。
これらの薬剤を適切に使用する事によってアトピー性皮膚炎は自然寛解も期待出来る疾患であると考えます。
以下、当院で行っているアトピー性皮膚炎の治療の概略をお示し致します。

当院ではアトピー性皮膚炎が疑われる患者さんが来院された場合、必要があれば血液検査(特異的IgE測定、RAST法)を行う事があります。
この検査では、ダニやハウスダスト、卵や牛乳などが原因抗原として陽性となる事が多いですが、特に食品の場合は、明らかに「これを食べると急に皮膚炎が悪化した。」以外には制限する必要はないと考えます。

①ステロイド外用薬、免疫抑制外用薬の使い方
治療ではまずステロイド外用薬を使います。
重症の場合は、アンテベート®軟膏、テクスメテン®軟膏、マイザー®軟膏
などのベリーストロングクラスの軟膏から開始します。
中等症の場合は、リンデロンV®軟膏などのストロングクラスから、軽症の場合や小児に対しては、アルメタ®軟膏やロコイド®軟膏などのミディアムクラスの軟膏を使います。
軟膏の使用量と塗り方が大変重要です。
回数は1日2〜3回で、塗る量は人差し指の第一関節までの長さを外用薬のチューブから押し出した量を、手のひら2枚分の面積に刷り込まずに乗せるように塗り拡げるのがコツです。
(想像されているよりずっと多量の軟膏を塗る事にびっくりされる患者さんが多いです。)
ステロイド軟膏は、まず数日から数週間は毎日塗り続けて皮膚の炎症を治めて下さい。
炎症が完全に治ったら1週間に何日かは後述する保湿剤のみにして、ステロイド軟膏を塗る日を減らしていきます。
最終的にはステロイド軟膏を塗らずに保湿剤だけで安定させる事を目標にしています。
当院では顔面に塗る場合は、皮膚萎縮や毛細血管拡張などの副作用が出やすいため、ロコイド®︎軟膏や免疫抑制外用薬のプロトピック®軟膏を1日1〜2回使用しています。

②保湿外用剤を使ったスキンケア
ステロイド外用薬の他に保湿外用剤も必ず併用します。
保湿外用剤は皮膚に油分や保湿成分を与えてバリア機能を守る効果があります。
保湿外用剤には、主にヒルドイド®ソフト軟膏とローション、ウレパール®クリーム、白色ワセリンなどを使用しています。
入浴は毎日行うように勧めております。
入浴時は石鹸を用いてよく泡立て、軽く流すようにして、タオルやスポンジで皮膚を擦らないように指導しています。
入浴後は身体の水分を軽く拭き取った後、すぐに保湿外用剤を塗るように指導しています。
保湿外用剤は入浴後を含めて1日3〜4回塗ります。

③内服療法
内服療法には、皮膚炎の痒みを抑えて、搔く事による悪化を防ぐ働きがあります。
当院では主に抗アレルギー薬を使っています。
小児に対しては、ザジテン®ドライシロップの1日2回内服が奏功します。
成人にはアレグラ®の2回内服が眠気か少なく使いやすいです。
タリオン®、アレロック®は痒みを抑える効果が一番強いと思われますが、少し眠気が出るようです。
1日1回の内服薬では、エバルテル®、ジルテック®、クラリチン®の夜間内服が止痒効果が強いようです。
最近発売されたザイザル®は、ジルテック®と同様に強い止痒効果がありますが、眠気は少ないです。
漢方薬では補中益気湯®︎が炎症と痒みを抑える効果があります。

以上のような既存の治療では効果が得られない程重症の患者さんには、免疫抑制剤のシクロスポリン®内服薬が保険適応となりました。
ただアトピー性皮膚炎は、年齢を重ねる程軽快する事が多い疾患ですので、
シクロスポリン®内服が必要な患者さんは極稀です。

以上アトピー性皮膚炎の当院での治療について説明しましたが、最後に民間療法についての私見を述べます。
前にも述べましたが、皮膚の炎症を抑える働きがあるのはステロイド外用薬と免疫抑制外用薬しかありません。
それにも関わらず、ステロイド外用薬に対する誤解や先入観から、これらを忌避しようとする患者さんが少なくありません。
ステロイド外用薬は適切に使えば非常に有効で重篤な副作用が起きる事はありません。
民間療法や食事制限、健康食品、自然食品、サプリメント、特殊なクリームや水など、所謂「アトピービジネス」が多数存在しますが、
これらの治療のみでアトピー性皮膚炎が完治する事はありませんので、くれぐれも注意して頂きたいと思います。
またこのお話は全ての患者さんに伝えている事ですが、「アトピー性皮膚炎は大変辛い疾患なのですが、症状が強いのは子供か、20〜30歳くらいまでですよ。その証拠に高齢者にアトピー性皮膚炎はいませんからね。アトピー性皮膚炎は年齢を重ねれば重ねる程軽快し、やがて自然寛解する疾患ですから焦らず根気良く付き合っていきましょうね。」と話しております。