患者さんに寄り添う医療


最近病医院を次々に変える患者さん(ドクターショッピング)、患者さんが自分の都合の良い時間にかかるコンビニ受診など、患者さんの行動を批判する意見が多数見受けられます。
しかし私はこのような意見は、患者さんの気持ちを無視した医療従事者側の一方的な意見だと思います。
私も以前にある疾患にかかり、患者になった事がありますが、患者は自分の病気に対しては非常に強い恐怖感と不安を感じているものなのです。
特に家に帰ってたった一人になった時には、恐怖と不安が何倍にもなって襲いかかってくるのです。
そして他人がどんなに病気で苦しんでいても、それは他人事に過ぎません。
自分自身が病気にかかる事とは深刻度が全く異なります。
そこで患者さんはほぼ全ての方が、超ワガママとなります。
まさにモンスターペイシェントと言われる状況です。
病院に駆け込んできて病気をすぐに治して欲しいと強く要求します。
医師や看護師などの医師従事者は、患者さんが病気で苦しんでいる時に、その苦痛を和らげ、不安を共有し、癒す為にいるのです。
患者さんのあらゆる要求に応える為、これまでの経験、知識、技術を総動員して対応します。
時には哲学の話に及ぶ事もあります。
もし病状が思わしくない時や、患者さんが診断や治療法に納得されない時は、直ちに他病医院のセカンドオピニオンを求めます。
そのような時に大変役に立つのが医師の人脈です。
私のように医師になって40年近く経つと、大学の後輩が大病院の院長や医長になられているケースが多く、紹介状一枚で全国どこの病院でも紹介する事が可能です。
私達医療従事者が最も幸福とやりがいを感じる瞬間は、もがき苦しんで来院した患者さんが、すっかり元気になって帰宅される時、他病院に紹介した患者さんが元気になって戻って来られた時などです。
そして何より嬉しいのが、癌などの難治疾患を克服されて、幸福な日常生活を送っている事を知った時です。
超多忙な毎日が続いておりますが、患者さんの笑顔を見ると全ての疲れが吹き飛んでしまいます。
私達医療従事者は、患者さんを癒しているのですが、逆に患者さんの笑顔や安心した姿に癒されているのだと強く感じます。